よくこんなことを嘆かれる年長クラスの親御さんがいらっしゃいます。毎月の模試が返却されるたびに「小学校受験に向かって必死に親子で頑張ってきたのに…」と。成績が思いのほか伸びず、頑張りがなかなか数値で表れない。焦る気持ちからつい出てしまうのでしょう。幼児教室に通っていない方の中には、「こんな幼児期に無理して教室に通わせて勉強させる必要があるのかしら?」と思われている方もいらっしゃることでしょう。
アメリカ、シカゴ大学の経済学、ジェームズ・J・ヘックマン教授によれば、「質の高い早期教育を受けた子どもは、学歴・年収・雇用などの面で大きな効果を上げている」そうです。これは、早期教育を受けたことでIQや学力が高くなったことを指しているのではありません。早期教育の有無が、小学校入学直後の学力に差が見られるのは確かなようですが、入学後、8歳前後でほとんどその差はなくなるとのこと。テストで計る学力、いわゆる「認知能力」は短期的には効果があるようですが、継続はしないということです。
では、なぜ幼児教育が学歴・年収・雇用といった面で効果を高めているのでしょうか。それは「非」認知能力が鍛えられたことに原因があるそうです。「非認知能力」とは自制心・やり抜く力・意欲・社会性・問題解決力などを指します。つまり、生き抜く上で必要な力とも言えるでしょう。非認知能力を幼い頃から鍛えられた子どもは、自分で計画を立て、努力し、問題を解決し、頑張り抜いて、成功を手にする割合が高い、ということです。
このように考えると、幼児期の教育が無駄になることはないと言えます。理英会の授業でも、机上でプリントをやるだけではありません。絵画制作では、巧緻性を身につけたり、どういう手順で制作していくか、どう表現するか、等を考えたりもしますし、運動では自分の体の動かし方を知り、できないことは何度も練習することで出来るようになり、自信も身についていきます。集団行動ではコミュニケーション能力や協力することの大切さを学び、集団で上手にやっていくには、時として自分の気持ちをコントロールしていかなければならないことを知っていきます。
幼児教室では小学校受験という、子どもにとっておそらく人生最初のハードルのクリアを目指してはいますが、試験に合格することだけに思考が向き過ぎないようにして、いろいろと豊かな経験を親子で味わうことを心がけてみましょう。数値には表れない部分でも、お子さんはきっと成長していると思います。理英会を卒業された保護者の方が口を揃えておっしゃること、それは「受験を機に親子で、夫婦で、数え切れないほどの経験をしました。中身の濃い幼児期を過ごしたからこそ、我が子は小学生になった今でも、自分で考えたり、頑張る姿勢が身に付いています」という言葉です。
今年の年長クラスのあるお母さまも、こんなことをおっしゃっていました。「知識の詰め込みだけではなく、我が子には志望校の入試とは直接関係ないことも経験させてあげたい。子どもが興味を持ったことがあれば、そこで立ち止まり、多少回り道になって時間がかかってでもやらせてあげたい。なぜなら、小学校入学後も、さらに中学、高校、それ以降でも、『学ぶことが楽しい』と思ってもらいたいからです。」
長い目で見た時、お子さんにとって必要な能力は、「認知能力」「非認知能力」どちらですか?
執筆者紹介
どんちゃか理英会 りえ先生(仮名)
自身も数年前まで理英会に母として通い、愛息を小学校受験させた(もちろん結果は志望校合格!)。そして今は理英会スタッフとして、後輩ママさんやお子さんの受験指導、日々の授業に格闘している。母と指導者両面の視点から見えてくるものをこのコラムで自由に語ります。
本人コメント「今まさに受験最中であるお母さん、お父さんの息抜きとしてお役に立てたら嬉しいです」