「何でわからないの?」「この前、教えたでしょ?」
我が子につい言ってしまう言葉の代表的なものです。「何でわからないかがわからない」と嘆くお母さん、お父さんも多いと思います。何十年も生きてきてたくさん経験を積んだ大人には簡単でも、数年しか生きていない子どもは経験値が少ないですから、わからないのは当たり前ですね。知ってほしいことや教えたいこと、お子さんが興味を示した時に伝えてあげていますか?その時、五感は刺激されていましたか?今回は“五感”についてお話したいと思います。
“五感”とは視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の5つの感覚のことです。目・耳・鼻・手・口を使い、感じたことが感覚器官を通り、脳に情報が送られ、運動器官へ伝わり、行動が起こります。大人は今まで培った情報を使い頭の中だけで考えることができますが、子どもはそうはいかないのです。そこを理解していないと、前述のような言葉がつい出てきてしまうのです。
理英会の授業で『浮き沈み』の実験をします。水の入った水槽に色々なものを子ども達と一緒に入れていきます。石はどうかな?沈んだ!重いから沈んだのかな。蓋が閉まっているビンも重いから沈むよ。あれ?浮かんだ!(空気が入っているからですね)クリップは軽いから浮かぶかな?沈むの?!スプーンは沈むね。キラキラしているから?実際に子ども達が手に取り重さを感じ(触覚)、沈める時の水の音を聞き(聴覚)(中にはそーっと入れると浮くかも!と思い、水に入れる子もいます。その考え、いいですね!)、目で見て確かめ(視覚)ていきます。思ったこと、感じたことを口にしてみることで、脳へ知識が定着していきます。
例えばお花見シーズン。ニュースでも花見気分は味わえますが、桜の木の下で実際にお花見をしてみましょう。親子で桜の木を探し歩いていく。近付くと桜の花びらが風に舞う様子を目にする。花びらを手に取ると、薄く透けるような淡いピンク色で、木の幹はごわごわしていて、横縞模様をしていると知ることができます。その下で広げたお弁当の匂い、空気や風の匂い、周囲の人々の話し声と共にしっかりと記憶に残ることでしょう。
先日「ゾウってどんな色?肌はどうかな?」と聞いたところ「グレーでツルツルしているよ」「水色だよ」と声が上がりました。テレビに映し出されたゾウを遠目から見たのでしょうか。絵本に出てくるゾウも可愛らしい色をしているので、そのイメージから答えたのかもしれません。身近な動物園に行き、近くで動物の動きや匂い、声を聞いてみましょう。ゆっくり動いたり、じーっとして動かない動物もいるかもしれません。唸るような声や動物の意外な鳴き声が聞けるかもしれません。
このように五感を刺激するような体験をさせることは親御さんにとっては時間もお金も労力も必要で、面倒なことかもしれません。最近ではスマートフォンやタブレットで手軽に映像を見ることができ、知りたい情報もすぐに得られるため、つい頼ってしまいがちですよね。ただ、その時刺激されるのは「視覚」「聴覚」の2つです。目で見てわかった、話を聞いてわかったと片付けるのではなく、せっかくですから実物に触れ、残りの「三感」も刺激してみましょう。その時のお子さんの目を見てください。きっとすごい!楽しい!知りたい!とキラキラ輝いていることでしょう。「教えたでしょ?」と何度も同じことを繰り返すよりも一瞬にしてお子さんの心や脳に響くと思います。五感に訴えかける学びをしてみませんか?
執筆者紹介
どんちゃか理英会 りえ先生(仮名)
自身も数年前まで理英会に母として通い、愛息を小学校受験させた(もちろん結果は志望校合格!)。そして今は理英会スタッフとして、後輩ママさんやお子さんの受験指導、日々の授業に格闘している。母と指導者両面の視点から見えてくるものをこのコラムで自由に語ります。
本人コメント「今まさに受験最中であるお母さん、お父さんの息抜きとしてお役に立てたら嬉しいです」