~「マザリーズの理論と実践」の編著者、児玉珠美さんに聞いてみた~
~「マザリーズの理論と実践」の編著者、
児玉珠美さんに聞いてみた~
赤ちゃんをあやすときのやわらかい声かけを「マザリーズ」といいます。あまり聞きなれないと思いますが、知り合いのかわいい赤ちゃんを見ると、「まぁかわいい!」声のトーンをあげてにこにこしてしまう、あれです。どんなに渋い声のおじさんでさえ、赤ちゃん相手に渋く「うん、かわいい・・・な」とは言わず、「ありゃりゃー、かわいいねぇ」と鼻声になったりするのが言われてみればわれながら不思議。
私たちの幼児教室「どんちゃか幼児教室」では、かれこれ20年以上前からこの「マザリーズ」というものを取り入れています。実は少し前に、スタッフの中から「『マザリーズって?』と聞かれるとしっかりと答えられるスタッフがいつの間にか少なくなっていませんか?」という声があがったわけです。
余談ですが、このマザリーズという言葉はれっきとした発達心理学や育児学でよく登場する専門用語です。似たような言葉に、授業後のご父母と語り合ったりアドバイスを差し上げたりする時間を指す「マザーリング」という言葉があります。こちらは今から40年前に幼児教室を創設したての私たちの先輩が作ったどんちゃかオリジナルの造語。ところが最近いくつかの幼児教室でこの「マザーリング」がちゃっかりと使われていて苦笑い。もしかして無断で拝借してる?「マザーリング」ってよその幼児教室の人も思わず使いたくなるくらいいいネーミングだったんだなー、うん、と私たちは少し鼻高々なんですよ。
さて、ちょうどいい機会なのでどんちゃかならではの1歳幼児へのアプローチとしての「マザリーズ」にもう一度光を当ててみよう、ということになりました。
4年前から私たちが教育コラムコーナーを担当させていただいている神奈川新聞の記事としてこのマザリーズをテーマとして扱うことにしました。
※神奈川新聞 ザ・チャレンジ(幼児教育編)2018.6.25掲載
今回の取材を進める中で今の日本の「マザリーズの第一人者」と言える先生にたどり着きました。『マザリーズの理論と実践』の編著者、愛知学泉短期大学教授の児玉珠美さんです。
忙しい中を電話インタビューに答えてくださいました。
児玉珠美さんの経歴
早稲田大学大学院教育学研究科博士課程修了
現在、愛知学泉短期大学教授
著書
--日本の教育の中では、感情を豊かに出すことが賢いと思われません。優秀な人とは、感情をあまり表に出さず、論理的に話す人という考え方があるからだと思います。
--赤ちゃんへ声を掛けるときの声は、国や民族に関係なく、自然と「やや高め・ゆっくり・抑揚たっぷり」になる特徴があります。(ほう、世界共通なんだね!) 赤ちゃんはこの声が大好きで、聞くと安心します。
--お母さんの中には、思うように赤ちゃんに声を掛けてあげられない方も少なくありません。(いろいろなお母さんがいる中でそういうお母さんは一定数おられます それを悩んでいる方も少なくないです) マザリーズのモデルになる存在が身近にいなかったり、感情を大きく表現することに恥ずかしさを感じてしまったりすることもあるでしょう。 本来、人間は感情的な生き物です。マザリーズ教室を開講する際、まず参加するお母さんたちに自分自身を解放してもらうプログラムを行います。みんなでストレッチや発声練習をして歌も歌ってもらいます。そうした後にお母さんたちが赤ちゃんに呼びかけると、0歳児の赤ちゃんたちはすごい集中力で聞くのです。 お母さんたちはその様子を見て、うれしくなり、相乗効果でどんどん声が出てきます。
--子どもは話し言葉を聞いて、言葉を覚え始めます。だから、生まれてから文字を覚えるまでの間に人間の声が好きになることは、コミュニケーション力や言語力を高めるためにもとても重要だといいます。
近年になってますます注目をされているマザリーズは、研究者たちの実験により、赤ちゃんをリラックスさせる以外に重要な働きをすることがわかってきました。
実験A4~9ヶ月のテレビ画面で
①マザリーズで話しかけるこちらに反応した
②大人向けでかたりかける
結論
まだ言葉を理解していない幼児でもマザリーズで話すことで心を通わせることや、快の気持ちにさせることができる
実験B乳児の両サイドのスピーカーから
①マザリーズで話しかけるこちらに反応した
②大人向けでかたりかける
結論
マザリーズは子どもの注意と興味を引く事がわかる。声や口調から愛情などの感情に気づくからと考えられている
実 例
「〇〇ちゃんはのどが渇いたのかなー?」や「痛いの痛いのとんでいけー。」
など単純な文構造をマザリーズで話しかける事により、単語や文法の理解につながる。また、母音を伸ばすことによって、まだ言葉を発することができない乳児にも音が聞き取りやすくなる。
結論
マザリーズは子どもの語彙を増やすのに役立っている
そして最後の効果がこちら
話しかける内容が子どもの成長によって違い、子どもの反応から子どもの成長を感じることができる
いかがでしょう。
更にこのマザリーズのすごいところは、「いいものなんだね、よーし、がんばってやってみよう!」ではないところです。気がついたら、もうみんなやっているところではないでしょうか。
無意識のうちにで「マザリーズ」をがんばっているお母さん、お父さん、その調子で!
どんちゃか幼児教室/幼小受験 理英会なかざと じゅん
幼児、そのご父母、幼児教室スタッフ、小学校現場などから生の声を収集することを
日々のフィールドワークとしている
横浜国立大学教育学部心理学科卒