例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、『伝記小泉信三』が課題図書に選ばれました。
さらに2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』の中でも、子育て・教育に関する話を一話ごと取り上げて、要点を簡単にご紹介いたします。
今回は22話の要点を意訳してご紹介します。
心が通い合い、一挙一動、すべてのことが楽しくて、笑いにつながる家族団らん。
他人では知ることのできない喜びです。
しかし、ひとたび、家族の一人が自分のことだけを考えて行動するようになると、家族の交わりが素直にできなくなるものです。
そうなってしまっても、大きなもめ事を起こさず、家を治めている人もあるかもしれません。
けれども、現実は他の家族は表面的に従っているに過ぎません。
本人一代は表面だけ無事に終わっても、子の代になったときに、それがもとになってうまくいかないことも出てくるでしょう。
自己満足か、わが家を保つ気風のどちらが大事でしょうか。
このように、事の軽重を誤ることのないようにしたいものです。
22話では家族団らんの秘けつが語られます。
難しいことが語られているわけではありませんでした。
あくまで人間関係の基本が説かれています。
「あなたは相手が家族だからと、わがままを通していませんか?」
こういった誰もが身につまされる問いかけです。
家族ならではの楽しさは、他人では、なかなかわからないと、福澤は語っています。
一方で、家族の不協和音も、なかなか他人からはわからないものでしょう。
「わが家の常識は世間の非常識」という言葉があるくらいです。
他人から指摘を受けて直す機会もあまりありません。
ですから、福澤は自分自身で判断すること、律することを強く説くのです。
その背景には、常に人は、独立した個人として互いを尊重するべき、自分でしっかり判断すべきという福澤の思想があります。
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