例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、『伝記小泉信三』が課題図書に選ばれました。
さらに2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』の中でも、子育て・教育に関する話を一話ごと取り上げて、要点を簡単にご紹介いたします。
今回は29話の要点を意訳してご紹介します。
育ててくれた父母への恩は大変に大きいもので、終生忘れてはならないものです。
しかし、教育を受け成人して後、人は独立して生計を営むべきだと私は考えています。
その後は一切、父母の厄介になってはいけないと思うのです。
一方、父母の方でも、子が成人したら、子の発言や行動を妨げてはならないのです。
互いに干渉せず、その後は情愛だけで交わり、病気や災難、危急のときに至ってお互いに助け合うべきなのです。
この29話にも福澤の理念、「独立自尊」の精神にのっとった考え方がよく表れています。
成人後は親子であっても、あまり、べったりし過ぎるのはよくないことだと説いています。
「家」にとらわれることなく、それぞれが個人の生き方を重視することこそ、この頃の福澤が世に広めたかった考え方と言えるでしょう。
個人として生きる自覚、それこそが世の中を変えるのだという『福翁百話』、ひいては福澤の思想に通じる考え方だからです。
これも現代の今なお、生きている問題提起でしょう。
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