例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、『伝記小泉信三』が課題図書に選ばれ、さらに2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』の中でも、子育て・教育に関する話を一話ごと取り上げて、要点を簡単にご紹介いたします。
今回は33話の要点をご紹介します。
33話で福沢諭吉は「学問はいらない!」という論者の意見を紹介し、続いて自分の考えを語り始めます。
「学問を知らなくても駆け引きがうまい人がいるでしょう。お店の番頭を任せるにしても、小僧さんから出世した者が学校出の学者さんよりも良い。学者は実際には役に立たない」
なるほど、この人の言うことも確かで学校の内にいて人間社会に当たらないのであれば、畑の中で水泳の練習をしているようなものです。
しかし、もう一歩進めて考えてみましょう。
碁・将棋や槍術、そのほかあらゆるものに「型」があります。
この「型」はそれらの道の根拠や意義を含んでいるものです。
こういった型を知らずして、その道の達人と呼ばれる域に進むことはできないでしょう。
それと同じで社会の中にある万事は徹頭徹尾、学問上の「原理」にもとづいているのです。
間違ってもその範囲外にそれることは許されないのです。
無学の風習に浸かったままの幸せ者では世の中の流れに取り残されるでしょう。
俗人の言葉に耳を傾けることなく、皆さんさっそうと自分の道を進んでください。
この33話は学問に対する偏見を取り上げています。
学問に対する偏見が生じた背景に江戸時代は「学問=漢学」で実際の生活とは学問は関係がないという認識が定着したからと分析しています。
福沢は「実学」こそ重要で商業・工業の奨励をまず重視していることもポイントです。
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