例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、『伝記小泉信三』が課題図書に選ばれ、さらに2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』の中でも、子育て・教育に関する話を一話ごと取り上げて、要点を簡単にご紹介いたします。
今回は32話の要点をご紹介します。
「学問は学者がするものだ」と学問を学者任せにして、一般人が学問を身に付けないのはよくありません。
学問の成果を広く一般の人が理解していなければ、せっかくの学問の力がいかされないからです。
医師が医術を研究して、その成果がわかっていても周囲の人が医学に対する理解や信頼がなければ、せっかくの医学も使われることがないでしょう。
こうしたことがないように、広く一般に学問が必要で教育を奨励することは重要なことなのです。
どのような労働に携わろうと、学問のことわりの中で働いているのです。
時計職人がどのような仕組みで時刻を指すのか、どのような部品を使っているのかと時計の原理を知っていることは専門家でなくても当然必要でしょう。
同じように豆腐屋さん、酒屋さん、大工さん、ご飯を炊くにしても、すべて学理の中にあることです。
広い意味で教育を身に付け学問社会を形成することがまず、文明の中に生活する人間として重要なのです。
ひとりひとりが自覚を持って学ぶ姿勢を持ち、知識を持つことこそ、社会を形成するうえで必要なことだと福澤は説きます。
この32話は学問には価値があるという共通の前提を持つことを強く訴えかける内容に感じました。
[ 専門家でなくても学問は必要!(福翁百話)]のご感想やコメントをお寄せください。
最近のコメント