例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、「伝記小泉信三」が課題図書に選ばれ、2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』のあらすじを簡単にご紹介いたします。
そして、どんな内容か、少しでもおわかりいだだけるよう、百話の中から特に、子育て・教育に関する話を選び、意訳してご紹介いたします。
福翁百話のあらすじ |
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まず『福翁百話』ですが、福沢諭吉(1835-1901)が、1897年(明治30年)に様々な場所で、それまで語っていた話を取りまとめ、出版した書籍です。 内容は「人生いかに生きるべきか」という観点で書かれています。その百話のおおまかな内容ですが、次のとおりです。 1~10話今後、自然科学が万物を解き明かすことになるでしょう。 11~14話そんな心の人間らしさは特に美を求める心に由来しています。 15~19話人を取り巻く環境は誘惑が多いものです。 20~25話美しく生きることの基本は、仲睦まじい家庭をつくることからです。 26~31話子育てをする際は、子どもたちを平等に扱い、まずは体力づくりを優先することです。 31~41話子どもには個人の独立をうながすため、実学を身につけさせるようにしましょう。 42~48話独立心と慈善の心を持つことが大切です。 49~61話正直・節約・忍耐に心がけ、経済的に独立することも大事です。 62~68話国家が発展していくためには、まず人材が必要で、資産ある者が人材育成に取り組みましょう。 69~79話そうした人材育成、すなわち「教育」こそ、後世まで影響があるから重要なのです。 80~85話学問を修めるためには、まず健康が第一です。 86~91話政治は旧習にとらわれがちですが、昔が理想的だったわけではありません。 92~100話政府は国民の心を表したものなのだから、政府へはどんどん意見を表明しましょう。 |
子育て・教育を語っている話 |
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ここからは、100話ある話の中から厳選して子育て・教育論を福沢が展開している箇所を抜粋して、わかりやすく意訳して紹介します。
26話両親は自分のことにわき目も降らず、一生懸命育ててくれたのですから、その子どもが親孝行をするのは当然のことです。 27話この世に生を受けたからには、生きるため、衣食を得るための労働をしなければなりません。 31話人間も一種の動物と思って、子どものうちは精神面は気にせず、身体が健やかに発育することを重視しましょう。 また、5,6歳の幼児に本を読ませたり、数を数えさせたりしては、できないと言って叱っているようでは、将来、何の役にも立たず、ひとり読書にふけるだけで、友だちと集団行動ができないような、人物になることでしょう。 40話子どもは自然と両親を理想として、自分の家は楽しい所だと思うものです。 |
まとめ |
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このように『福翁百話』は、他の著書でも触れられる福沢の一貫した教育哲学が記されています。 特に有名な「独立自尊」や「まず獣身を成して、後に人心を養え」の考え方が、今回ご紹介した話の背景に伺えます。 100年余を経て今なお、有効なその考え、鋭い視点には大変敬服します。 |
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