道徳教育 どう進める?【神奈川新聞の理英会コラム】

 小学校でこの4月から道徳が正式な教科になった。これに先駆けて、お茶の水女子大学附属小学校(東京都文京区)では、2015年に新教科「てつがく」を創設。独自の道徳教育に取り組んでいる。同校の研究推進部長・片山守道教諭に話を聞いた。
■「てつがく」とは?
―児童が互いの考えを聞くことで刺激を受け、各自の考えを深める授業です。対話することと考えを書き記すことを大切にしています。対話のテーマは、例えば「生きるとはどういうこと?」「親友と友だちはどう違うの?」など。当たり前で日頃あまり意識しないことについて考える時間です。
■「てつがく」に取り組むのはなぜ?
―お茶の水女子大学附属小学校の教育理念は「シチズンシップ教育」です。その具現化が「てつがく」の授業です。「シチズンシップ教育」とは、多様性を認め主体的に社会参加する市民を育成する教育です。
■「てつがく」の授業での教師の役割は?
―教師はこの授業では教える立場でなく、対話の進行役としての務めに重点があります。子どもたちが何に引っかかり、どんな考えを持って対話を進めているのか察知し、授業展開の地図が描けるのが理想的です。しかし、その場での状況判断は難しく、ポイントで適切な応じ方ができないこともあります。全体把握を冷静に行い、対話が深まるような投げかけに留意しています。
 小学5年生の授業を見学した。クラスの全員が輪になって対話している。対話のテーマは「おたがいが自由でいられる判断の基準」だ。発言していた児童は地球儀を模したクッションボールを手にしている。発言が終わると、手を挙げていた児童の一人に向けてそのボールをポーンと投げて渡した。ボールを受け取った児童が次の発言を行うわけだ。これを繰り返し、活発に意見が飛び交っていた。「協力と思いやりは違うのでは?」「妊婦さんに電車で席を譲ることは、出産に協力しているのかな?」「他人と友だちでは思いやりに違いがない?」など。板書係の児童が意見をてきぱきと整理分類し、書き出す姿にも目を奪われた。
(どんちゃか・理英会 薗田隆平)

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