例年、慶應義塾横浜初等部の願書には創設者の福澤諭吉の著作『福翁自伝』を読んで、所感を記す指示がありました。
しかし、2020年度の横浜初等部の入試ではこれまでとは異なり、『伝記小泉信三』が課題図書に選ばれました。
さらに2021年度の横浜初等部の入試では『福翁百話』に課題図書が変更されました。
そこで、これからこの本を手にされる方のために『福翁百話』の中でも、子育て・教育に関する話を一話ごと取り上げて、要点を簡単にご紹介いたします。
今回は74話の要点を意訳してご紹介します。
教育の効用は必ずしも効果的に現れるようなものではありません。
外国留学をしたけれど、これといった成果がないまま帰国したというケースはよくあります。
また、公教育の費用に大金が投じられていながら、学業の進歩はその費用に見合っているのでしょうか。
教育は割に合わない。
値段の高いもの。
このような批判的な意見をお持ちの方もいることでしょう。
ただ、その大切なお金ですが、「富貴は浮雲のごとし」と言って、
財産はただある時にあるというだけのものでしょう。
なぜ大切なのかという根拠も忘れ、貯めこんでいるような人が多いように思います。
確かに、教育の成果は広大なものとは言えません。
しかし、一方で教育に費やすために必要な「お金」も、そこまで貴重にしまっておくものではありません。
ただ、身の外にあるお金が跡形もなく消えてしまうことの多いのに比べ、身についた教育が失われるという心配はありません。
こういうわけで、私は公的にも、私的にも、子どもの教育に金銭を惜しんではならないと思います。
よく教育を受けて身についたものは消えずに、一生の財産になると言われますが、そのことを福澤流に説いたのがこの74話です。
教育が効果が必ずあるとか、万能だという言い方をしないあたり、理想だけを語らず、現実を見て説く福澤諭吉らしさのあるところです。
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